1カケラ/5  『カケラ』は自分の経験や青春時代の気持ち全てをツッコンだ

安藤モモ子(以下 安):(本誌ローデッドを手にとって)これ『ノウイング』のニコラス・ケイジじゃないですかーっ!あ…しかもここにもいっぱい♪好きですよ、ニコラス・ケイジ。あの頭髪の感じとか、何ともいえないアクの強さとか
もっさん(以下 も):そんないきなり我らがニコ★ケイに食いついていただけるなんて、編集長が喜びます!こんなフリーペーパーですいません。表紙は一見まともですが、中身はバカです
DJ亜星(以下 亜):ノリノリな気分になって頂いたところで更にこちら、北海道のお土産を
:ホントですか、凄く嬉しいです!うちに持って帰って皆で食べさせて頂きます
:是非、なんならさり気なくご自分で買ったお土産にしてもいいですよ(どうせ亜星の自腹だし)。『カケラ』初監督作品という事ですが私達、実は人生初インタビューの2人なんです。緊張しているのでトチ狂った事言うかもしれませんが、どうぞヨロシクお願いします
:じゃ初☆初同士ですね。大丈夫、ドンドン聞いて下さい。聞かないで下さいって事はひとつもないし、どこ突っ込んで頂いてもOKです
:それは心強い、助かります。で早速ですが『カケラ』を観た感想を一言、言わせて下さい。当然のように面白過ぎたのですが実はラストに私、奇声を発してしまいまして
:あ〜アレね!でもそれって凄く嬉しい反応です。「あの意味は何ですか?」とよく聞かれますが、それは想像通りで色々。ある意味それはどうでも良くて、自分でも初号を観た時に音の効果にビックリしました
:自分の奇声を思わずカブせてしまいましたよ
:これ初めて言いますが、話の振られ方もあっていつもはちょっとカッコつけた言い方をしなければならないのかなと思って・・・。例えば宗教の太鼓の音などは自分の中に溜まったマイナス要素を抜けさせる効果が絶対あると思っているんです。逆にジェームスの音楽が好きなのは彼の音楽はどこまでも優しくて青春映画には必要だと。
そして最後、あの音を当ててみた時に「あ、コレお払いじゃね?」って思いました。ハルちゃんもリコちゃんも私も、多分観ているお客さんも「あ・・・でもスッキリしたな」って(笑)
:予想してなかったものですから、色々な反応が楽しみですね
:予算の関係もあり順撮りは出来ないのですが、最初と最後のシーンだけはと決めていました。当初、脚本ではラストは違ったんですけど、ハル(満島ひかり)とリコ(中村映里子)のやりきった事とその表情を見ていたらもう何も要らないなと。
満島ひかりちゃんは眼力の強い女優さんですが最初からそういったもの全てを捨てもらい、必要だと思っていた最後にだけ出せばいいからと言ったらひかりちゃん余計に気合入ってしまって。それまで出したくても出せなかった眼力やストレスやらがカーッと
:出てました
:それを見てたら私も、皆もそうしたいよね?って。あと若い人には特に肉体的な事と精神的な事、両方の関わりをもっと意識して生きてもらいたいというのがあります。何はともかく分からなくてもまず行動してみようよと。大学で小難しい理論を教授が講義しているシーンがありますが、その内容も『カケラ』というタイトルと上手く繋がればなと
:あの…男目線で観ると男の描き方がちょっと
:ホントにろくでなしで
:ツライ(笑)?確かに「了太(ハルの彼氏)あの男酷いですよね」とよく言われますが、若いうちはあんなものではないかと。女だってあんな事する人いっぱいいますし、リコちゃんだって独占欲が強くなったり
:逆に男へのエールの部分もきっとあるだろうなと思いました
:まさしくそう、ありますよ。了太だって1人の人間としてそのアイデンティティというか、歩いていく最後の後姿に希望や救いを持たせています。女同士というそのコンセプトだけでダメな方もいますし、多くの人に受け入れてもらえるには、映画として成立させるにはと考え、男や女など色々なものをコントラスト激しく描こうと。メインの登場人物も多いわけではありませんし。で、やっぱりオスを描きたくて
:オ、オス!?
:一度キャスティングの時に憎めないような甘えん坊のタイプも考えましたが、これはやっぱりオスだなと。全部動物みたいな
:そういえばリコがハルに「動物のニオイがする」なんて言うシーンがありましたね
:あの意味分かりました!?生理の時とかって女の人のニオイが普段と違うっていうじゃないですか
:あぁ〜??どうしましょう、私それ気付かなかったかも
:いや、女の人は分からないらしいです。前に付き合っていた人にそんなような事言われた経験があって。それで女をよく知っている男で奥田瑛二(笑)が近くにいたので「女が気付かなくて男が気付く事は何?」と聞いてみたら、「ソレあるある」と同じ事を言ったので。逆に女のリコちゃんがそんな事感知出来たら面白いでしょ?意味不明でもいいから言わせようと。人としての直感とか生き物としての自然な事として
:さすが奥田さんですね。面白いといえばやはり、志茂田景樹さんの登場シーン。あれには見事ヤラれました
:ははは、あれは志茂田さんだから日本人にしか分からないと思っていたら全世界共通みたいで皆爆笑してくれて。だって目がもうおかしいですもん!私は自分で動いて見せて役者さんに演技をお願いするタイプですがテストで一度やってみましょうという時、志茂田さんセリフ言うかなと思ったら突然カメラ目線でこっちに向かって歩いてきたんですよ
:うわっ!まさかの自由
:そう、そのまさか!!メイキングも相当面白いですよ。途中で目が離せなくなりましたし、志茂田さんの気持ちはソコまできていたという真剣勝負の表れがあのシーンです
:あの名場面が生まれるまでに色々とあったんですね。確かに作品全体を通して海外にもウケがいいだろうなという雰囲気があります
:嬉しい事に海外での評判もとても良くて。それはやはり私が海外での生活が長かったというのもあると思います。『カケラ』は自分の経験や青春時代の気持ち全てをツッコンで脚本を書いたので、どこかしらそういった受け入れやすいニオイが外国の人にも伝わるのではないでしょうか
:更に気になったのはその登場直前の会話の流れもあって、景樹さんはとても意味深なキャラ設定でしたよね
:はい、他に注目して頂きたい人物が実はもう1人、リコちゃんが行くクラブにも登場します。実は性別的にはあの場で唯一存在する男なのに、セリフや見た目にも?がたくさん浮かぶ事になっていて説明するとそのアイデンティティが相当複雑。逆転し過ぎていて何がなんだか分からなくなってくると思います。
私自身も混乱してきて、もう何が言いたいかというとソコまできたら
「そんなのどーだっていいじゃーーんっ!!(叫)」
と言いたいリコちゃんの気持ち。それをいくつか付け足しました




       
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