2カケラ/5  優しさや愛を表現していきたい

:やはり普段、結構映画を観に行ったりするんですか?先ほども『ノウイング』のワンシーンのニコ★ケイだと瞬時に分かりましたし
:そうでもないです。家庭環境的に偏った作品などもたくさん観てきましたが、世の中の映画全てを観ているわけではありませんので、そんな語る権利はないと思っています。本当に観ている人を知っていますし。妹のサクラもよく取材で好きな女優さんは誰ですかみたいな質問をされますけど、語れる程そんな観ていないって(笑)
:私たちなんて映画を大して観てもいないクセに好き勝手言ってます
:でも最近観た映画で最高に良かったのは言えます。『息もできない』のヤン・イクチュンが素敵で。惚れました。結婚したい
:韓国の映画ですね。そういうのを観てこの人を撮りたいとか思いますか
:それは思いました。ヤン・イクチュンは監督で主演もやっていて
:(え!?監督で主演といったら『シベリア超特急』じゃん)
:凄い監督で、凄い役者。彼は監督をしても役者の目線や生理も知っているから演出に関しても鋭いところもあって、他の役者さんの撮り方も上手いのかと思います。それはイーストウッド奥田瑛二もそうですし、そういったところは気になりますね
:逆に自分も演じたいとか
:それは自分で撮ってみてから初めて思いました。演じてみないと分からない事もあるし1回経験したいと。でも結局は、それも監督の為という事になってしまうのですが
:早くから映画監督になりたいと決めていたんですか
:私は3歳から絵を描き始め10歳の時に父に呼び出されて「俺は10歳で将来を決めて夢を叶えたからお前も決めろ」言われ、その時は「絵を描く人になりたい」と言いました。18歳の夏休みに奥田瑛二初監督作品でその美術監督の下に付いたスタッフが芸大生。それで「お前も参加してみたら」と言われて映画を内側から体験したのが初めて。ガツンと衝撃を受けましたね。一目惚れや恋愛にも似ていますが、嬉しいトキメキや感動と同時にコンプレックスや不安もドンドン大きくなりました。相手も自分を好きになってくれるかどうかなんて分からないという恐怖心
:やっぱりそういう時はコンプレックスとかあるんですね
:コンプレックスだらけの子供でしたので、更なるコンプレックスです。自分が何者かも分からない時期あり、それで海外に行きたいと思いました。そういうのが嫌だというという事ではないのですが何をやっても両親の名前が前に出てきてしまうので、それこそアイデンティティがないというか。でも見たくないモノ、フタをしたいモノに突き進んでいく性格だったのでこれはもうやるしかないと




       
       (C)ゼロ・ピクチュアズ




:見るからに大変そうですし、自主映画の場合は特に生活も苦しいと聞きます。どうしてこんなも辛いのに映画監督になりたいと思うんでしょう
:ね、確かに苦しいですよ。やりたいと思っていても1本作ってやめてしまう人もたくさんいますし。こまめに執筆活動もしてますけど、私もお金を映画に全部使っちゃって生活が・・・でもサクラが稼いでいるので奢ってくれるでしょ(照)。自分のお年玉貯金も奥田瑛二初監督作品の為に全部あげちゃいましたし、それ多分もう返ってこないです
:それ凄く泣けるいい話
:でもその分、親には今でもお世話になっていますし感謝ですね。海外に留学もさせてもらいましたし、それ自体もとても幸せな事
:いいですね、海外。私も行きたい・・・でも似合わないか、海外(意味不明)
:似合いますよ(笑)。私が行ったのはロンドンの国立大学。お金持ちばかりがいる私立ではなかったので普通に日本で暮らしていたら知り合えなかったような人達に出会いました。階級社会が未だに根強いイギリスで差別もありますし、家庭環境の問題で愛情を受けられなかった人や負のエナジーから作品を作っているような友達も。
そういった愛が知りたくて葛藤するような作品は私には作れないし、逆にモモ子みたいな愛情を知っている人の作品は自分には作れないから羨ましいとも彼らに言われました。だから私は優しさとか愛をきちんと表現していきたいというのがあります
:愛ですね。本当に『カケラ』を観て愛を感じました。愛しかないと、全ては愛
:ヤッタネ!
:答えは愛!
:大きく!安藤モモ子!『カケラ』!愛!
何より生きているという事だけで幸せ。想像力が欠落している若者も多くて悲しいと思ってます。本編でも戦争に関するセリフのシーンがあるのですが、例えば身近な人の死という悲しい経験は誰にでも有りえますよね。そういった悲しみの経験をそこでストップするのではなく、その向こう側にその何倍ものの数え切れないぐらいの人々が死んでいるという想像。それを体験する為にわざわざ自分から不幸に足を踏み入れるという行為は間違っていると思いますし、その為に想像力というモノを持たせてもらっていると思います。
その逆で、愛だって想像すれば色々な形があるのも分かるはず。私も友達が失恋の相談をしてきても「バカじゃないの?」と思うどこか冷たいところがありましたが、自分が傷ついて経験してみるとスッゴクよく分かって。ハルとリコもそう。単純だけど摩擦をおこしてぶつかり合って傷つく事を恐れずに経験するべき
:素晴らしい事です。もっと愛を語りましょう
:ホントにそうです、愛しかないんです。だから現場でも物凄くぶつかり合いまくりました。それはイジメでもなんでもなく、死ぬ程ひかりちゃんと映里子ちゃんを愛していたので。愛がない人が世の中、映画界でも多い。悪魔主義、堕落してマイナスな方に引っ張られて行く方が断然楽に決まってます。でもどんなに辛くても良い方にいかなければ。絶対に負けません!
:監督はやはり、リコちゃんタイプですかね
:きっとハルかリコのどちらかに反映されているんだろうなと
:ふふふ、でも結構ハルだったりします恋愛になったら。リコちゃんの方が弱かったりするところもありますし
:リコはイタイ部分もたくさんありましたが、出会いのシーンでハルに対する攻めのナンパ言葉はカッコよくて。アレいいですよね〜、でもあんな人いますかね
:私は積極的に話しかけるタイプ。自分で全く理解出来ない事は書けませんし。そういった私の外国人っぽいところはやっぱり海外生活での影響が大きいかも。恋愛とかでなくても知らない人に対して何か興味がわいた事があればドンドン話しかけます。だって道とかでも人に聞けば直ぐに分かる事なのにずっとウロウロしている人とかいるでしょ?
:あ〜でも私はどちらの気持ちも分かります
:自分はウロウロして聞けないタイプですね
:じゃ、そんな時は私を呼んで下さい(笑)