『セーラー服と機関銃ー卒業ー』

 「さよならは別れの言葉じゃなくてー」などと例の歌をアカペラで突如歌い出す橋本環奈の姿を見て、すべての観客が例外なく「は?」と思うであろう奇跡の傑作『セーラー服と機関銃ー卒業ー』。

 結論から言うと、この作品を観ずしてアイドル映画は語れない。アイドル映画の中のアイドル映画。アイドル映画の最高峰であり完成型。「天使すぎるアイドル」と崇められた橋本環奈の魅力というかパワー、圧倒的存在感、スゴ味みたいなものがズンズンくる作品となっております。

 ぶっちゃけ、橋本環奈さん初主演ということでもう演技なんかも超ヘタクソ! 自然体の演技を目指したのか、ムダ話やアドリブっぽい流れも作ってはいますが、いかんせん対応力が未熟なので自然に見せようとすればするほど不自然になるというマイナス効果を生んでおりました。がしかし、この不自然さが逆に橋本環奈の素の暗黒面みたいなものを漂わせる結果になっており、所々で「あれ?カンナちゃんってヤンキーぽくね?」みたいな瞬間が垣間見えるのが恐ろしい。それがまたヤクザの組長である説得力にも繋がっており、姿は天使な女子高生なのにタダ者ではないオーラがしっかりと出ておりました。

 脇役がとんでもなく豪華なので、カンナちゃん不在のシーンはことごとく迫力満点。しっかりとヤクザ映画しております。しかし「殺るか殺られるか!」という抗争劇でありながらカンナちゃんが登場すると途端にアイドル映画にチェンジ。ヤクザ→アイドル→ヤクザ→アイドル→アイドル→ヤクザといった具合で、血なまぐささと可愛らしさが交互に入れ替わる様子は、まるで観客の頭の中で天使と悪魔がささやき合っているような無駄すぎる葛藤を生み出すこと間違い無し。
とにかく橋本環奈という存在の凄さが、百戦錬磨のベテラン脇役達にもひけを取らないという恐ろしい現実を突きつけられるという意味で、今後の日本映画の歴史を揺るがす大注目作であることは間違いないのです!