『アントマン』

小学生の頃、親戚のお兄ちゃんちに遊びに行ったんだけど、そこには近所の本屋さんなんかでは見た事もないような分厚い「怪獣大百科」があって、当時の俺の心を掴んで放さないウルトラセブンに出てくる怪獣やら宇宙人やらの情報だけでなく、シリーズに登場するすべての怪獣やウルトラ兄弟に関する情報が網羅されていた。
お兄ちゃんいわく「よう兄弟、ウルトラセブンの身長は実に40メートルはあるが、場合によってはミクロのサイズまで小さくなることもできるんだぜ、これ豆な」「へー、兄ちゃんはさすがもの知りだなあ。でもそんなに小さくなる意味なんかあるの?」「あたり前だろ。小さくなれるってことは、大きくなることよりもずっと便利なんだぜ」。
ほう。小さいことのメリットってなんだろう? そんなことを考えながら、帰りのロマンスカーの中で、お母さんがむいてくれたミカンを口いっぱいに頬張りながら窓の外の景色を眺めていた。あ、言い忘れたけど当時は小田原に住んでいたからロマンスカーに乗る機会はけっこうあって、お父さんが俺のために決まって先頭の展望席を取ってくれていたこと、前にも話したっけ? まあいいや。

でもお父さんには悪いけどその日ばかりは景色を楽しんでいるヒマはない。だって俺はミクロのウルトラセブンのことで頭がいっぱいだったから。
小さいと大変だろうな、モノを持ち運びにくいし、人間に踏んずけられたりするかもしれない。いやまてよ?小さいってことは、このミカン1個で腹一杯食べられるじゃないか。しかも誰にも気付かれずにいろんな場所に忍び込める。そんなこと考えていたらワクワクしてきて、小さいヒーローも悪くないな。諜報的な意味では最強じゃないか!なんてさ。

つまり何が言いたいのかというと、あれから30年以上経っているにもかかわらず、俺は小さいヒーローへの憧れというか、ワクワク感をいまだに持ち続けているんだよという話。
アントマン』は1,5センチのヒーローで、セブンのミクロには及ばないが、強力な羽アリに乗って飛行移動したり、敵のコンピューターに忍び込んで精密機械を破壊したりして地球を守るんだ。
アベンジャーズ基地に潜入したときは、さすがにすぐに見つかってしまったが、あのファルコンを出し抜いたのは凄い。ファルコンのやつ「キャプテンには内緒だ」なんて部下に言っていたくらいだから相当バツが悪かったんだろうね。
しかもアントマンは、ミニサイズと通常の人間サイズ、一瞬でサイズ変更できるので戦い方も奇抜で刺激的なんだ。
見かけはチビだけど最高に頼りになる奴、そんなアントマンがもしアベンジャーズの仲間入りしたらと思うと、俺のワクワクは興奮度マックス。
そんな日が未来にやってくるなら、その日まではぜったいに安全運転しなくちゃ。塩分や糖分は控えて、十分な睡眠と程よい運動、帰宅後のうがい・手洗いもしっかりするような毎日を心がけて、ぜったいに、何がなんでも死なないようにするんだ。
最強のアベンジャーズと出会うために。

100点満点。