『ザ・ウォーク』


 高所恐怖症ってのは、高所恐怖症じゃない人が思う「高所」の概念なんかを軽く覆すほど「その程度で?」って高さでも平気で恐怖を感じるもので、その高さ実に30センチ。自宅リビングにあるテーブルに乗っかるだけで足がすくむわけで、お前ら高所恐怖症を甘く見るんじゃねーよなんて意味も無くドヤ顔しながら意を決して飛び降りる(テーブルから)。
もちろん、子供の頃は平気でジャングルジムやら上り棒やらで遊んでいたわけだが、それはもちろんまだ「恐怖」を知らなかったからなのもあるし、そもそも手すりがあると結構大丈夫。

そんな病的なまでに高所恐怖症な俺が、まあたかが映画だし。なんて軽い気持ちで観たら、あまりの恐怖で2、3度本気で死んでしまった映画がコレ。『ザ・ウォーク』。歩くわけです。綱を。もう綱渡りってだけで地獄の所行だけど、この作品の主人公は、あのワールドトレードセンターのツインタワー屋上にワイヤーを張って、そこを命綱無しで渡る。これが本当に凄い。話を聞くだけで凄いことは十分わかるが、映像にして見ると、もう心臓が止まります。
俺なんか間違って3Dで鑑賞しちゃったもんだから、上映中何度意識が遠くなったことか。一瞬、丹波哲郎の「大霊界」を観にきたのかと思ったくらい、天上の世界に片足突っ込んでしまいました。

劇中、ビルの屋上から下を見下ろすアングルがやたら出てくるんだけど、もうね、吸い込まれるんです俺、あーゆうとこにいると。落ちる気がなくても、恐怖のあまり「ここにいるよりはマシ」とか思って体が勝手に落ちようとする。映画なのにそんな状態なので、常に生と死の境を彷徨いながら鑑賞していました。ある意味、主人公よりもずっと怖い思いをしているという。
で、この作品は綱渡りするまでの物語もめちゃくちゃ楽しい。大道芸人が綱渡りに魅せられるまでの半生が、テンポ良くポップな演出でラブストーリーなんかも交えつつ展開する。まさかクライマックスで瀕死にさせられるとは思えないほど軽快。しかも実話を基にした作品ってことで、つまり実際にあのビルで綱渡りした奴がいた。すげえ。

てなわけで、高所恐怖症の人には3D鑑賞を推奨します。死ねる。
1億点満点!