『キャロル』


とんでもなく刺激的な映画を観てしまったあとは、饒舌になどまったくなれないというか、もうほとんど沈黙してしまいます。何をどう言っていいのかわからないし、そもそも俺なんかが何かを言う資格がないのです。この作品を観たあとは、もうただただその余韻に浸りまくりたいわけで、「最高!」なんてつぶやく心の余裕なんてこれっぽっちもありません。あまりにも気に入ってしまって、もはや誰にも勧めたくないなんて気持ちもあって、うっかり絶賛しすぎると、この映画の素晴らしさがわからないような連中にまで勧めてしまいそうで、そんな奴らが興味本位で鑑賞してトンチンカンな批判なんかをし出したりなんかしたら、罪悪感でいっぱいになるし。

とか言いながらも、鑑賞してからもう一ヶ月くらい経つし「キャロル」について手放しで絶賛しまくります。キャロル最高!もう一ヶ月沈黙してたんで、心置きなく言える。キャロルは最高であると!もちろん性格上、映画の内容なんかを説明する気になどなれませんが、簡単に言うとレズビアンの映画です。しかしそんな性癖とか属性とかは関係なく、恋愛映画としての緊張感というか、人を好きになることで世界が一変するスリル、アクション、サスペンスと、それがもたらす人間的成長なんかが、恐ろしいまでにリアルに表現されているのです。洗練された大人の女性ケイト・ブランシェットさんは言わずと知れた名女優ですが、素朴で純粋なルーニー・マーラちゃんの佇まいの見事さというか、躊躇しながらもおそるおそる禁断の世界に踏み込む絶妙な演技に、俺みたいな変態は興奮を隠せないわけです。これはもちろん下世話な意味での興奮で、もはや「美しいエロティック表現」などという胡散臭い表現をする映画ライターなど全員地獄行き決定。俺は堂々と言う!この映画はエロいと!始終、信じられないくらいエロいんだと!そのエロさたるや、近所のツタヤのエロコーナーで1時間近く物色したところでコレを超えるレズAVは到底見つけられないだろうってほど。つまり、この作品は野蛮さに満ちているのです。なのに全編通して貫かれた映像美の素晴らしさがすべての野蛮さを高級感で包み込んでしまう。ほんと魅せ方が完璧すぎる。世界一上品な野蛮。「キャロル」を観ずしてラブストーリーは語れないのです。
100点満点!