『クリード チャンプを継ぐ男』


俺はこの作品を観て、本当に、心の底から「生きていて良かった」と思った。いろいろツライこともあったけど、人生って最高だ。マジで。俺の周囲には自殺した奴なんかも数人いたが、そいつらはみんな2015年に『クリード チャンプを継ぐ男』が観られると知っていたなら命を捨てずにいたかもしれない。それほどまでに、この作品には観る価値がありまくりなのだ。

「ロッキー、盟友アポロの息子と再びリングへ」このフレーズを聞いて、この作品を見ないなどという選択肢はありえない。それは決して、俺が昔からボクシングを含む格闘技が好きだからという理由ではない。
この映画には人生において大事な教えがたくさん詰まっている。金とか栄光とかを掴む方法ではなくて、もっとベーシックでシンプルな生き方のことだ。

それを若きクリードに教えるのが、もはや単なるガタイのデカイおじいちゃんと化したシルベスター・スタローンである。今ではタレ目でボンレスハムばっか食っているイメージしかないスタローンおじいちゃんだが、なんと伝説のチャンピオン「ロッキー・バルボア」だったのだ。驚きである。みんな知ってるけど。
その彼が、鏡に向かってファイティングポーズをとるクリードにこんなセリフを言う。「自分こそが最強の敵だ。リング上でも、人生においても」。ガツンと脳を破壊するとんでもないセリフをいとも簡単に口にしやがる。

俺はもうスクリーンを見ながら目眩がして、そのまま意識を失いそうになった。
「敵は自分」。もちろんそんなこと百も承知だが、スタローンに言われたらもう破壊力がまるで違う。思わず映画館帰りに近所のボクシングジムに入会届けを出してしまいそうになるほどの説得力。


そして、そんな教えを忠実にモノにした若き才能クリードくんによる躍動感あふれるボクシングシーンのアツさたるやギネス級。劇中は、みんなが聞きたいあのテーマ曲をあえて封印する余裕も見せる。
当然である。これはロッキーの映画でありながら主役はロッキーではないんだから。完璧な演出だ。

クライマックスでは自分でも驚くほど号泣してしまったが、上映終了後に周囲を見ると、観客のおっさんたちもみんな目を真っ赤にしていたので、きっと明日から頑張れるだろう。戦え、男たち。

1億点満点!