『劇場霊』

ぐわ。
俺がホラー映画に求めるものって何かというとですね。当然、恐怖とお色気です。
恐怖とお色気がないホラーなんてホラーじゃなくて、そんなのは全部「男はつらいよ」です。
そう!今、思いつきで決めた!恐怖とお色気のないホラーは、ぜんぶ例外なく「男はつらいよ」に認定!
なので、今回鑑賞した恐怖もお色気も皆無なホラー作品「劇場霊」は、いますぐそのタイトルを「男はつらいよ〜寅次郎のヴァンパイア記念日」に変更しろ。マジで!
舞台となるのは葛飾柴又の劇場ホール。待望の新作劇の練習中に、始終困り顔の寅次郎ことAKB48島崎遥香(通称ぱるる)が長い旅から戻ってきたからさあ大変!関係者を巻き込んでのドタバタ大騒動に発展って、やかましいわ!
そもそも監督の中田秀夫は、あのジャパニーズホラー映画の金字塔とも呼べる傑作「リング」を作った大御所である!俺は「リング」を映画館で観たときに、あまりの怖さで席から立てなくなった。見ると死ぬビデオってなんだよそれ意味わかんないし、テレビから貞子出てきて真田広之がド派手に絶命して映画終了とかマジ勘弁!とにかく、意味がわからない怖さというか、逃れられない呪いに触れてしまう不条理さとか絶望とかが本当に怖かったわけです。そのほかにも「女優霊」という、これまた恐ろしい呪いの作品を撮っていたり、最近だと「クロユリ団地」も孤独の恐ろしさを描いた傑作でした。そんな中田監督が「劇場霊」という思わせぶりなホラー作品を発表したらですね、誰もが「リング」のような恐怖を期待するじゃないですか。まさか「男はつらいよ」だとは思わない。
しかしですな、フタを開けたらあんた、恐怖ゼロ、お色気ゼロ、なんなら賠償千恵子も前田吟もおいちゃんもゼロの一風変わった「男はつらいよ」になっているではありませんか!
そこで思いました。
中田監督は、なぜ今になって突然「男はつらいよ」を作ったのだろうか?と。
ぱるるは決して渥美清の寅次郎には及ばない。しかし、その天然のポンコツぶり、AKBの中でも何を考えているかわからないふわふわとした存在であることを考えると、多少の寅次郎っぽさは醸し出しているといった俺の見解に、異論を唱える者はいないだろう。
つまり100人以上の大所帯であるAKBグループの中で、「フーテン」という呼び名がもっともしっくりくる唯一の存在こそがぱるるなのです。
「フーテンのぱるる」。ほら。この違和感の無さはいったい何事でしょうか。そうか!そうだったのか!などと、強引かつバカバカしく納得しなければやってられないのがこの作品の魅力なのであった。

つまり0点