『TOKYO TRIBE』
今作を観た感想はというと「こいつHIP HOPわかってねえな」である。
劇中、登場キャラたちがほとんどのセリフをラップするという前代未聞の「ラップミュージカル」が話題となった作品だが、そのメインとなるラップはおろか、展開もストーリーもアクションすらも単調でクソダサいという地獄のような作品だった。
本職のラッパーが大勢出演していて、さらに原作は世界観が抜群のマンガ『TOKYO TRIBE2』ってことでHIP HOP好きにはたまらない内容なのに、なぜこんなダサい出来になってしまうのか。
ラップできる奴は演技できないし、演技できる奴はラップができない。
さらに、ラップも演技も両方ダメな奴もいたりして死にそうになる。
特に俳優陣のラップはひどすぎる。
本職じゃないからしかたないのかもしれないが、少しは努力しろよと(竹内力はもう許そう)。
結局マトモにラップできているのは芸達者な染谷将太くんだけという有様。
デタラメ映画としてもあまりにも刺激が無さすぎるし、世界観の作り込みも甘い。
池袋や新宿、武蔵野、渋谷、練馬など、それぞれを根城にしているギャングがわんさか出てくるが、どこもセットが似通っていて場所として差別化できていない。
また、CGが手抜きすぎて、それをギャグとしてやっているんだろうけど、ひと昔前のVシネレベルのCGで泣けるほど寒い。
格闘シーンも相変わらずで、いつまで美少女にカンフーをやらせている気だろう。
ラップ映画だったらラップをちゃんとやれ、バカ映画なんだったらバカなことをちゃんとやれ。
何ひとつ中途半端なのに、「ブッ飛んでるでしょ?」といった甘えが随所に見え隠れしている。
最近の『ヒミズ』や『地獄でなぜ悪い』が突き抜けた傑作だったというのに、とても同じ監督が撮ったとは思えないモウロクぶり。
つーか、この監督はやはりチヤホヤされすぎたのかもしれない。
周囲がイエスマンばかりで「ダサいよ」と言ってくれる人がいなかったのか?
ただ、良かった点もある。
出演しているラッパーの豪華さには本当にテンションが上がった。
特に、映画そのものを超越して素晴らしい存在感を醸し出していた練マザファッカーのD.Oにはヤラれた。さすがに監督もリスペクトしているのか、非常にオイシイ立ち位置で出演していたし、ラップシーンも多くて最高だった。
そのほかにも、主演のYOUNG DAISをはじめ、チラッと顔を出して強烈な個性を見せるMC漢やアナーキーなんかをもっと見たかったなあ。
つまりこの作品、頑張っているのはラッパーたちだけで、映画制作サイドにとっては単なるお遊び(あるいはオッパイを見たかっただけ)に過ぎないという最低なHIP HOP侮辱映画である。
本来ならマイナス点だが、ラッパーさんたちの頑張りに免じて大サービスの0点!(100点満点中)