『ゴーン・ガール』

ひとことで言うと「いい映画」。

既婚者からすると、もはや笑うしかないというか、なにこれ、うちと一緒じゃんみたいな。

つまり、結婚生活とは奇想天外でエキサイティングで気苦労の絶えないものであるといったことを、すこぶるハイセンスに面白おかしく、そしてゾッとするほどリアルに描いている。

結婚5年目の奥さんが突然失踪し、現場には争った跡や血痕が残っていて、警察は殺人として捜査。
で、旦那が真っ先に疑われるわけで、旦那が殺したの?それとも?ってミステリーなのかなと思わせて、中盤からいきなりぜんぜん違う映画になるという凝ったストーリー展開。

さすがデイヴィッド・フィンチャー監督なだけあって、演出がキレキレである。
もう不吉極まりなくて、それでいてスタイリッシュでワクワクするようなヴィジュアルなのだ。

夫婦生活ってのは「戦い」だなと最近すごく思う。

家では自然でいられるなんてのは大嘘で、男は「夫」役を演じているし、女だって「妻」役を演じている。
日常的にその場の状況で、隠したり、疑ったり、呆れたり、見て見ぬフリしたりと、さまざまな駆け引きをしながら共存していく。

この作品を見て「結婚なんかしたくない」とか「女性って怖い」とか思っちゃう人もいるかもしれないが、これが現実というか、こういうのも含めて「結婚」だし、他人同士の男女が一緒に暮らすということはまさにこういうことなのだ。

これを楽しめる力を持っている人だけが、結婚する資格があるのかもしれない。

映画鑑賞中には、さまざまな感情が湧き上がる。

前半は不安と緊張、中盤で真実がわかると、家に帰りたくねえなーなんて思うw
でも、後半には「結婚生活っておもしれーな」という感情が生まれているからびっくり。

結婚していない人には「結婚したくないな」と思わせる内容かもしれないが、既婚者が見ると「結婚して良かったな」って思えてしまうのだ。

こんなジェットコースターみたいな刺激を、実は毎日味わっているんだなと思うと興奮してくる。

一般的に後味の悪いエンディングだと言われているが、俺からしたら完全にハッピーエンドである。
結婚生活15年を誇る俺ならば、ラストのその先も容易に想像できる。

最近は、結婚とはなんぞや?恋愛とはなんぞや?ということを問いかける作品が増えているが、皆「結婚」がなんなのかわからないし、知りたいと思っている人が多いのかもしれない。

「結婚」は、単なる契約であり、単なる社会なので、別にそれ以上でもそれ以下でもないと思うが、結婚がもたらすさまざまな出来事や感情や刺激が、最高に面白いものであることは確実だ。

結婚に理想を持つ者、結婚に絶望している者、いろいろいるかもしれないが、考えても無駄である。

結婚しなけりゃはじまらない事ってのが世の中にはたくさんあって、『ゴーン・ガール』はその一部をスリル満点に描いて見せてくれる。

カップルはこれを観て結婚するかどうか大いに悩んで欲しいし、既婚者のみなさんはこれを観て、自分の結婚生活における数々の戦いを思い出して誇りに思って欲しい。

しかし、間違っても夫婦一緒に観てはいけない。

ぜったいに一人で。くれぐれも嫁に見せちゃダメ。

1億点満点!