『さよなら歌舞伎町』
「さよなら歌舞伎町」は、人生において誰もが体験する「停滞している自分からの脱出」を描いている。
主要キャストは皆、何かから逃げている。
もちろんその「何か」とは自分自身である。
すべてが言い訳で、すべてが泣き言。
彼らは常に「ここは自分の居場所ではない」と思い悩んでいて、いつかは陽のあたる人生を歩みたいという夢を抱えつつも、欲望渦巻く夜の街に囚われているのだ。
夢破れた青年、AV女優になる女、逃げ続ける犯罪者、風俗嬢に慰められるダメ会社員、家出娘をデリヘル嬢にするチンピラ、そしてプロデビューのために枕営業も辞さないミュージシャン。
誰もが思う。「そんなんでいいのかよ」と。
いいのである。
それこそ人間らしさであり、たとえドン底にいても、皆それぞれ優しさと強さを内に秘めている。
たとえ汚らわしいと罵られようと、後悔するとわかっていても、人は夢を追う生き物なのだ。
韓国人の風俗嬢がカタコトの日本語で、落ち込んだ染谷将太を「ガンバッテ!」と励ますシーンは、とても印象深く感動的なシーンだ。
ドン底の人間が、ドン底の人間を励ます。
泣けてくる。
この作品、ラブホテルを舞台としているだけあって、とてつもなくエロい。
ヌードシーンが無駄に長く、セックス行為の臨場感も凄まじい。
ここで行われるセックスが、すべて後ろめたいセックスであるところがエロさを一層際立たせている。
なぜ人は後ろめたいセックスに溺れるのか?
この映画を観ればそれがわかる。
皆、何かから逃げているからだ。
ラブホテルは逃げ場所なのだ。
100点/100点満点中
※この作品の主要キャラ3人(染谷将太、前田敦子、南果歩)が完璧すぎる。
この3人が映画の世界観を創りだしているが、なんと3人が同じフレームに収まることはない。
しかし、この3人がいるからこそ、汚れたラブホテルがロマンチックになり得ているわけで、なんとも凄い力を持った俳優たちである。