『サボタージュ』

この作品を鑑賞した日の夜は、謎の組織にとっつかまって処刑されそうになる夢を見た。

処刑直前で目が覚めて、冷や汗まじりで身震いしながら時計を見るとまだ深夜3時。

当然のように、すぐさま再度眠りにつくことなどできないので、数秒前まで見ていたこの世の終わりのような処刑現場を思い出す。

俺はチームでなんらかのスパイ活動をしており、それがターゲットにバレてしまい、チーム一同が監禁・処刑されるのである。

あのあと、どんな運命が待っていたのだろうか?
そんなことを考えると、恐ろしさのあまり絶望してしまい、ぜんぜん寝れねえ。


昨年だったかにデビッド・エアー監督の『エンド・オブ・ウォッチ』という映画を観たとき、俺はこんな感想を書いている。

「この作品は、俺を筆頭とした全国の処刑恐怖症のみなさんが、心の底から震え上がること必至の恐怖シーンがテンコモリ」

なにゆえ彼は、喜々としておぞましい処刑を描きつづけるのか?

答えはもちろんわかっている。

デビッド・エアー監督は、誰よりも処刑を恐れているからである。

おそらく彼は、インターネットで大量のガチ処刑動画なんかを見て、「いやー処刑ってほんっとに野蛮ですよねー」などと水野晴郎っぽく言ってみたりする日常を送っているのだろう。

俺も処刑動画が好きでよく見るが、ああいうのを見ると「命や人権なんてものは所詮まやかしにすぎない」という現実を突きつけられる。

「処刑」という行為はダイレクトな人権否定であり、その行為は残酷でありながら一種の潔さ・美しさが伴っているというところに大きな魅力を感じたりもする。

このデビッド・エアーなる空気みたいな名前の監督の作品が、毎度のように全編通して処刑ムード満点なのは、そういった「処刑への大いなる魅力」にとりつかれているからではないだろうか。


最新作『サボタージュ』は、シュワルツェネッガー主演のアクション映画でありながら、呆れるほどにバイオレンス描写に重きを置いている。

特に死体の描写なんかには、異様なこだわりを感じずにはいられない。
明らかに鑑賞者を不快にしようとしているのだ。

執拗に死体を見せる逆サービス精神が凄まじい。

この監督はやはり完全にイカレていて、そのイカレ具合がハリウッドに認められているところも羨ましい限りだ。



100点/100点満点中



最強の男・シュワちゃんが主演であるという部分で、処刑映画における不安感・緊張感が薄れるのではないか?という懸念もあったが、まったく問題がない。

シュワちゃんの利用方法が明快で明確である。

この監督にはすべてが見えているのだ。
もはや誰が出演でも、どんな題材であろうとも、思い通りの地獄を作り出せる知恵とテクニックを持っている。

この先ぜったいに目が離せない映画監督である。