『ワールド・ウォーZ』


なぜか巧妙に「ゾンビ映画」であることが伏せられているこの映画。

見る人が見れば予告でひと目でわかるし、そもそも原作があるので知っている人はもちろん知っている。

だが、あまりゾンビに関わりのない人にとっては、かなり分かりづらい紹介のされ方。

これは間違いなく配給が「ブラッド・ピットのみ」を売っているのだ。

みなさーん、ブラピですよー!

で、フタを開けたらゾンビ映画なのだが、そのへんは口笛を吹きつつしらばっくれる。

あれ?言ってなかったっけw みたいな。

初日の昼の回はシネコンのもっとも広い上映館で満席。
ゾンビ映画もかなり市民権を得たものだ。
ロメロの映画なんか、古くて狭いスクリーンでしか観たことないのに。



違った。



開始20分ほどで、後ろのオバハンが「ちょっとこれは無理だわ」と客席全体に訴えるような大声で横のブラピファン友達(たぶん)にアピールしつつ退席。

劇中ではセリフ内で「ゾンビだ」とハッキリと会話している。

そう、ゾンビですよ!

もう逃れられない真実である。
ブラピさまが言ってるんだから。

バカでも理解できるように、ちゃんと字幕で出るんだから。
「ゾンビ」って。

ゾゾゾゾゾゾゾンビー!!!!!!
などという心境だったのか知らないが、後ろのオバハンはせっかくのブラピを断念した。

配給的には「ブラピもいいけどゾンビもね!」っていうククレカレー的なノリなんだろうけど、オバハンは「ブラピはいいけどゾンビは無理!」ってのが本音なのだ。

ほどなくして、クライマックスで前の席のオバハンが、これまた長い時間耐えてきたのか、黙って席を立ってそのまま上映終了まで戻ってこなかった。

「ゾンビの洗礼」

そんな言葉が頭をかすめる。

お前らは果たして本当にブラピファンなのか?
ブラピが好きであれば、ゾンビと戦う姿すらも萌えるんじゃねーか普通!

もはや「試されるブラピファン」といった様相の場内。

ブラピか?ゾンビか?

ウンコ味のカレーか?カレー味のウンコか?といった究極の選択を思わせる。

そもそもウンコ味って何?

前もって「ウンコの味です」と言われているから「これはウンコの味だ!」って認識するけど、事前申告がなければ単なる「クソマズいカレー」で済むんだから、ウンコ味のカレーのほうがまだマシじゃん!

しかし、申告がないのであれば、カレー味のウンコは「カレー」でしかないわけだ。
それがウンコだとしても、味がカレーなんだからウンコとは気付かないだろうし。

じゃあ、この映画に関してはどうか?

「ゾンビです」って事前申告ナシなんだから、ファンは「ブラピを観ている」という感覚で、ストーリー展開に多少の違和感があっても乗りきれたかもしれない。

しかし、劇中で「ゾンビ」と言っちゃうからさあ大変。

カレー食ってる最中に「それウンコ」と言われるようなものだ。



(前置き長すぎ)



100点/100点満点中




おっかない。
マジで
本作のゾンビは超ヤバい。

もうしょっぱなのゾンビパニックから、観客が気を抜いていたらおいていかれそうになるほどスピード感ハンパないのだ。

こりゃあブラピファンも茫然自失で立ちつくすわけだ。

基本は一般的なゾンビルールで設定されているが、今回のゾンビはウィルスの拡散が目的なので生肉を喰らわない。

つまり人間を食べないので、凄惨なスプラッタシーンがあまりないことが新しい恐怖の創造に成功した。

食欲を満たすヒマを惜しんで襲うので、爆発的にゾンビが増えるのだ。

その増えっぷりが凄い!

この手があったか!といった今までにないゾンビ表現がドカドカ登場するので、そのへんゾンビファンにはたまらないのだ。(ブラピファンは知らんが)

特にイスラエルでの超絶パニックシーンは圧巻。

もう興奮で脳がバクハツしそうになるとんでもないヴィジュアルインパクト!

ゾンビがぶわーっと来る!
ぶわーっと。

これ観るだけで1800円の価値がある。

とにかく、今までのゾンビ映画とはまるで違うスケール感で、ゾンビファンからするとマジで感慨深い。

あー、ついにゾンビ映画がここまできちゃったか。。。みたいな。

ブラピ主演ってのも凄いが、やはり都会での大規模なゾンビパニックっていうところがやっぱり凄い。

人とゾンビが入り乱れて、もうカオスになっているあの感じ。
まさにワールド・ウォー。

俺だったらマジでどうしよう。。。なんてことを考えながら観る。

これ、原作がゾンビ対策マニュアルみたいな小説らしいので、そんな見方が正しいのだ。

ゾンビ大戦はヤバイ。
大傑作。