『真夏の方程式』
ガリレオこと湯川学と旅先で出会った少年との思い出深い「夏休み」。
この作品に漂う圧倒的「夏休み感」は、まるでスクリーン全体が太陽であるかのように、目がくらむほど眩しい。
悲しい事件が起こるが、そこに湯川が関わることで、悲劇の中に一筋の希望の光が見えてくる。
その論理的思考が、人々の心を変えていくという流れが見事だった。
「全てを知って、選択すること」
これは人生全体においてとても重要なことではないだろうか。
また、被害者と加害者が交錯する展開で、本作のいちばんの謎は「湯川が誰を救おうとしているのか?」という部分だった。
それが明らかになったとき、この物語の残酷さと優しさに衝撃を受けて、俺は涙を止めることができなかった。
ミステリー度は低く、難解な科学的トリックもない。
普段は湯川とのやり取りで笑いを誘う刑事たちも、始終マジメに仕事をしている。
決めセリフや謎解きの数式ラクガキパフォーマンスも無し。
なのに、この映画が持つ世界観は紛れもなく『ガリレオ』だった。
子供嫌いの湯川と、唯一関わることが許された少年とのやり取りには、その瞬間、永遠に続くかとも思えるのに、実はあっという間に終わってしまう「夏休み」そのもののような儚さがあった。
ドラマとはまるで違う空気。
心地良い違和感と緊張とワクワクが混在した不思議な感覚。
鑑賞中に、この感覚は一体何なんだろう?って瞬間が多々あった。
そして、エンディングが近づくにつれ、その世界にずっと居続けたい気持ちもどんどん大きくなってゆく。
もっと観たい。
終わらないで欲しい。
「夏休みはやっぱり短い」なんてことを大江千里も歌っている。
鑑賞中に感じた、心地良い違和感と緊張とワクワクが混在した不思議な感覚の意味が最後にわかった。
そう。つまりこの映画を観ている2時間は、俺にとっての「夏休み」だったんだろう。
100点満点!