『リンカーン/秘密の書』
リンカーンさんがヴァンパイアハンターだったとか、実はどーでもいい。マジで。
ストーリーなんか、もう勝手にやってくれって気分だ。
この作品の凄さは、常識ハズレな演出と大胆不敵な編集なのだ。
まず展開がとんでもなく速い。
よくあるスピーディな展開なんてもんじゃないよ。
なんというかね「え!それ割愛しちゃうんだ!」とか「いつの間にこんなに年月経過したんだ!」とか、とにかく唐突に時間がブッ飛ぶ。
ま・・・まさか俺はいまスタンド攻撃を受けてるのでは!って本気で思う。
そして、無駄に気合いの入ったバカみたいなシーンばかりの展開にもオドロキを隠せない。
『ウォンテッド』と同じことが、エイブラハム・リンカーンで堂々と模倣されているので、ハッキリ言って説得力などまるで無い。
たとえば、何の前触れもなくバイト先の店長と一緒にバンパイア狩りに行ったりする。
それまで大したやり取りもしてなかったのに、いつ店長とそんなに仲良くなったんだ!ってビックリする。
で、さらにその店長が、大統領になっても側近として迎えられてるという唐突さに唖然とする。
え?え?ってあらゆる疑問を納得させるわけでもなく、観客自らムリヤリ納得する暇さえ与えず衝撃展開が続々訪れる。
「今、何があったのかよく分からないうちに、もう次がどんなになるか見なくちゃいけない」というスゲー状況がずっと続くのだ。
なのに、アクションシークエンスだけはやたらスタイリッシュでカッコ良く、マジでシビれるくらい洗練されているからびっくり。
展開がテキトーで演出は本意気という、このまるで何を信じて映画を撮っているのかわかんない姿勢に感動すら覚える。
こういった作品を観ると、俺なんかは映画という表現の無限の広がりをビンビンに感じてしまうんだよね。
いやー、映画って本当にいいものですね。
それでは来週の金曜ロードショーでお会いしましょう。
ヤメター!
ちなみのこの作品の監督は、ロシア発の今世紀最高に意味不明なSFアクション大作『ナイト・ウォッチ』でハリウッドに召還された人。
まさに生粋の水野晴郎である。