『プロメテウス』

この作品はもう冒頭から凄まじい。


信仰など知らんとばかりに、とてつもなくブッ飛んだ人類の誕生を、オープニングでイキナリ突きつけるっていうね。


まさに大胆不敵!


その後飛び出すのはエイリアン1作目を彷彿とさせる「PROMETHEUS」のタイトルバック。

あまりの興奮にもんどりうって身もだえ、過呼吸状態で紙袋をスーハースーハーしている俺の目の前には、3Dで臨場感たっぷりの地獄が容赦なく展開される。


スゴイ!スゴイ!スゴイ!スゴイ!ゴイスー!

もうスゴイ!という言葉以外なにも出ないのだ。


生きてて良かった!

こんなことを本気で感じるくらいに、この作品は俺にとって特別なものだ。


つまり『エイリアン』大好きー!ってことなんだけど、何が好きかっていうともう完全にヴィジュアルだよねどう考えても。


『エイリアン』1作目において圧倒的異世界のイメージを作り上げた、お馴染みのH・R・ギーガーさんの偉業こそが、エイリアンの魅力なわけだよ。


ギーガーのデザインの魅力は、たぶんわかる人にしかわかんないし、たぶんアレ見て何も感じない奴も当然いるだろう。


俺にとってたぶんアレは本能的なもので、遺伝子レベルで抗えない魅力なんじゃないかって思う。


文明社会に生きていても、先祖のヤバイ記憶って残ってるって言うじゃん。


残酷で血に飢えた欲望みたいなの。

俺には確実にそういうのがあるって断言できる。


内臓をはじめとした体内組織や細胞、性器、体液なんかを見て、俺は「エロティックだ」と思うことはあっても「グロい」などとはまず思わない。


それはまさに「生命の美しさ」なわけで、そんな生々しさをギーガーのデザインは表現している。


「エイリアン」のヴィジュアルは、そんな本能的パワーの完全なる具現化と言っていい。


『プロメテウス』は、映像作家リドリー・スコットならではのとんでもないヴィジュアルで、探査チームが遭遇する想像を絶する恐怖が描かれる。


恐怖演出に関して言えば、ダン・オバノンがそこで指揮をとっているんじゃないかってくらい元気ハツラツだ。


ストーリー展開は相当強引なのに、洗練された世界観と高級感のあるヴィジュアルが圧倒的な説得力を生みだしているんだよ。


始終繰り返される、生命力のズバ抜けた女性科学者と感情を持たないアンドロイドとの、一瞬たりともわかり合えない奇妙なやり取りもドラマとして秀逸。


さらに、登場人物もとても魅力的で、特にシャーリーズ・セロン嬢がとてつもなくカワイイっていうね。


もう何から何まで常識ハズレでブッ飛んでて、そして美しい。


ハッキリ言わせてもらうと、俺にとって、もっとも恥知らずな作品は『エイリアンVSプレデター』みたいな映画のことで、人のふんどしで相撲を取るような行為で金儲けに走ったばかりか、個々の芸術的価値を著しく下げた作品として、その罪はボットン便所よりも深く汚い。


テレビブロスのインタビューで、リドリー・スコット監督が「エイリアンが搾り取られて抜け殻になってしまう前に自分でなんとかしたかった」みたいなことを言っていたが、まさにスコットさんは自らの手で我が子であるエイリアンを救ったんだと思う。

今年、この作品を超える作品には巡り合えないような気がする。


超絶傑作。