『ムカデ人間2』

人間Aの肛門と人間Bの口を縫い合わせて、そんなのを何人も繋げてムカデ人間を作ろう!という知的かつエレガントな発想の映画『ムカデ人間』。


人間A(先頭)が食ったモノはウンコとして人間B(2番手)の口に入ると。
で、当然人間Bのウンコも次につなげられた人間C(3番手)の食糧となる。


こうすれば「ムカデ人間」を創造することが可能なのだー!と1作目で高らかに宣言したマッドサイエンティストのおっさん。


しかし、観客のほとんどが「いや、それぜんぜん医学的にも成立しねーじゃんwww」と鼻で笑って席を立つという散々な結果に。


先頭はメシを食えるからいいけど、2番手以降はウンコを食わなければならない。

全然フェアじゃないよねっていう話なのだ。

最後尾の奴なんか、ウンコ食ってウンコを出すことになるジャマイカ

つーことは、平等・公平(人権的な)を考えるのであれば、最後尾のウンコを、次は先頭の奴が食わなければダメなんじゃないの?

つまりはウンコの循環のみが、ムカデ人間ムカデ人間たらしめるとかもうどーでもいーや。


そんな、現役の医者が考えたとは到底思えないズサンな「ムカデ人間プロジェクト」を、ぬわんと2作目では一般の精神障害キモデブ男が引き継いだからもう大変!


1作目のズサンさなんて目じゃないほどムチャクチャな、まじりっけナシの正統派キチガイムカデパーティーが開催されることに!


30年前のシンセで鳴らしたような重低音の不協和音をBGMに、セリフ一切無しで残虐のかぎりをつくす主人公のデブ男は、その風貌だけですでに通報モノのインパクト。

マジでね、この映画の一番のグロテスクってのは、もう間違いなく主人公の存在そのものなのだよ。

その他の殺戮シーンや手術シーンなんかはもうオマケでしかないわけ。

それほどまでにこの主人公、ものすごいキャラクターで、もうこいつに太刀打ちできるのはアベンジャーズくらいだと思うな。


すげー!マジですげー!このデブおもしれー!ガンバレー!

なんて応援してる場合じゃないよ。

今回は12人を繋げてムカデ人間を作るんだけど、デブ主人公は医者でもなんでもないから、麻酔はしねーわ、縫合はホッチキスだわ、手術機材も家にあった工具セットだわでもう大騒ぎだよ。


そんなこんなで、映画後半はもう例のノイズと被害者の悲鳴のみが鳴り響くというアグレッシブな展開。


しかし、そんな血まみれ、クソまみれ、ゲロまみれのブレインデッド状態なのにも関わらず、この作品は一定の上品さをキープしているところがマジで凄いと思う。


続編として、1作目とは違うんだよオマエら!これでもくらえ!みたいな圧倒的な気合いを感じる作品だし、ストーリー展開や演出・描写に関しては常識ハズレ極まりないものだ。

なのに、やっぱりホラー映画の見せ方としてのセオリーはキチンと押さえているってとこに感動した。

トム・シックス監督は、ちゃんと映画を撮れる奴なんだよ。

1作目が行儀の良いサスペンスホラーとして次第点の出来だったのは、やはりまぐれでもなんでもなくて、確かな作家性によるものだったんだ。


キワモノを扱いながら、高い芸術性を残して過激なだけじゃ終わらない。

同じ作品をオラフ・イッテンバッハやロイド・カウフマンが撮ったらたぶん下品なポルノにしかならなかっただろう。

そういう意味で、この作品はとんでもない偉業であると本気で言えるお!