『カケラ』

カケラ。
もうタイトルからしてグッとくるとはこの事。
ラブ、SF、アドベンチャー、オッパイ、ドキュメンタリー、アクション、シベ超、サスペンス、ファンタジー、コメディ、ホラー、ロマンポルノ・・・・。
映画を観る前、観てる時、観終わった後。ジャンルの違いはどうであれ、どんなものでも気が付けば自分の心のスキマの何かを埋めようとしている事が多いはず。
何だかんだ適当な気分で観たとしても、結局映画ってそういうものじゃないですか。
性欲モロ出しの彼氏は一応いるけど、見た目にも若者の生気がみなぎっていない大学生のハル(満島ひかり)と、そんなハルにドキュンと一目惚れした病気や事故などで身体の一部を失ってしまった人の為にパーツを作っているメディカルアーティストのリコ(中村映里子)。
自分自身の事でさえ見失いがちなハル。自分の思っている事をハッキリと主張出来るリコ。
そんな対照的な女の子同士の恋愛と青春の数ページ。
『カケラ』を観て笑いもしない、モヤモヤしない、胸に突き刺さらない、ドキドキしない・・・なんていう無感情で終わる琴線の持ち主とは友達になれないような気がします。
ドラマのような青春なんてなかったし、メンドクセー女の気持ちなんて分からない。なんて人でも「なるほど女ってそうなのか」と思うかもしれないし。
私なんてハルとリコが居酒屋で大喧嘩するシーンなんて泣きそうになりましたよ。
思えば人とケンカなんて殆どした事もない事に気付いたりもしましたけど。
何でもそうですが、こういうのって年齢とか性別の違いではなく、例え経験がなくても理解出来なくても、その気持ちを分かろうとする心意気があるかないかの違いだけなんじゃないのかな。
でもそんな事しなくても、普通に面白くて間違いなく心に何か引っかかってくる作品だと思います。
音楽も素敵過ぎて胸キュンもの。胸キュンをいつの間にか忘れた人にも是非観て欲しいですね。
胸キュンっていうのが何か分からないって人に対しては今後あるかもしれないから「生きろ」としか答えようがないのですが、難解さはなく、伝わってくるのはシンプルな人生共通のテーマ。
もし、ハルとリコのどちらにも全く共感出来ないという切ないアナタには、リコがパーツを担当する陶子さん(かたせ梨乃)に注目していただきたい。陶子さんは最初はいたって普通の女性に見えたのに、時間が経過するごとにドンドン自由になっていくワガママっぷりなど目が離せない面白さ。そして哀しい女でもある。
ハルちゃんもリコちゃんも陶子さんもいわゆる、イタイ女なのかもしれません。
がしかしもしかしたら、イイ女とイタイ女は紙一重なのかもしれない。それぐらい女優達が魅力的。
原作があるにしろ、オリジナリティ溢れるトロピカルなセンス。傑作だわ、これ。