『ウォッチメン』

本当にパワフルな作品を見ると、それがどんな内容かどうかなんて関係なく勃起してしまう。

それはヘンタイとかそういった問題ではなくて、きわめて自然な人間的反応なのではないだろうか。
なぜなら芸術とは、五感を刺激する精神表現のことであり、刺激を受けたからにはそこに何らかの肉体的反応が生まれるのは当然なのだ。


吉良吉影(知る人ぞ知る殺人犯)はダ・ヴィンチの『モナリザ』の手を見て勃起したらしいが、まさに圧倒的芸術には人知を超えた精神覚醒が伴う。
ウォッチメン』のイメージが持つ芸術的パワーは、もはや映画という芸術体系そのものをとてつもない高みへと昇華させたと言っても過言ではない。
なぜなら俺は、興奮のあまり鑑賞中ほとんど勃起していたからだ。


映画の中盤で精神科医ロールシャッハテストをするシーンがあるが、画面に現れたテストパネルの模様がすべて女性器に見えてしまった観客は俺だけではないはず。←「おめーだけだ」というツッコミは無用


とにかくそれほどまでに、この作品は精神的刺激に満ちていた。
もうすべてのシーンが女性器のドアップみたいな映画だ。


ウォッチメン』の素晴らしさは、グロテスクな演出や頭のオカシイキャラクターたちの魅力ももちろんだが、やはりヴィジュアルの迫力に勝るものはないだろう。
たとえば、登場ヒーローのひとりであるドクター・マンハッタンという男がいるのだが、こいつが始終チンチンを出している。
公の場に出るときはちゃんと服を着るというのに、プライベートでは全裸なのである。
それはそれで別に文句はないが、チンチンが気になってしょうがない。
こいつは万能能力を持っていて、分身したりするのだが、チンチン出して分裂したこのヘンタイヒーロー数人がフレームインしたスクリーンは壮絶。
あまりにも壮絶すぎて感動的だ。


女性器と化したビジュアルイメージの中のチンチン。
あろうことかスクリーンそのものがセックスをしているのだ!
つまり我々は、3時間近くのあいだ、芸術(ウォッチメンそのものの精神=女性器)と芸術(イメージ=チンチン)によるセックスを見せつけられているということだ。


展開するストーリーもこれまた素晴らしい。
正義のヒーローたちが、ただの腕っ節の強いヘンタイの集まりだというところが泣ける。
悪党は容赦なく惨殺するし、イイ女がいれば力づくでヤッちゃうし、名声を利用して金儲けする。
こういった人間的な部分にドラマを感じずにはいられない。


殺意や性欲や支配欲といった、人間のナルティスティックな部分に触れない芸術なんぞクソだ!
この作品が持つ暴力性はリアルそのものであり、こういった作品を誰にも媚びることなく真剣に作りあげたザック・スナイダー監督はモノホンの芸術家だ。


思えばザック・スナイダー監督は『ドーン・オブ・ザ・デッド』でデビューして以来、人間の「暴力という名の激情」を、とても丁寧かつダイナミックに撮ってきた。
ウォッチメン』はまさにその集大成ともいえる激情映画最高峰である。


観ろ。