『ハッシュパピー バスタブ島の少女』
国や自治体は弱い者の味方だ。
福祉、介護、医療、生活保護など、弱者を手厚くサポートする機能が確立していて、誰もが基本的生活が送れるよう配慮されている素晴らしき現代社会。
しかし、そんな恩恵は社会から一歩外にでてしまったらまるで無くなってしまう。
6歳の少女ハッシュパピーは、まさにその社会から見放された場所「バスタブ島」のオンボロ小屋で父親と2人で暮らしている。
その暮らしぶりは、とても現代社会とは思えないほど野性的なものである。
しかし少女にとっては、その野蛮さこそが日常。
一瞬一瞬が「いまを生き延びる」というシンプルで残酷な瞬間であり、そんな中を当然のごとく逞しく生きる少女の姿は圧巻だ。
世界観はとてもファンタジーなのに、そこにある野蛮さや残酷さはとてつもなくリアルで生々しい。
極限状態で、父親は少女に生き方を教える。
もちろんご立派な説教をたれたりはしない。
その頑なな信念と不器用な行動から、少女を導いていくのだ。
男はバカなので、愛なんて語らなくていい。
背中を見せればいいんじゃないかな。
生き方をそのまんまダイレクトに見せれば、ぜったいに伝わるんだと思う。
子どもというのは大人のことを見抜く。
本気か、嘘かを本能的に感じとるから、子どもに嘘は通じない。
さらに、子どもは自分を偽って生きている大人にも敏感に反応するのではないかと思う。
だからこそ、すべての大人は真剣に生きるべきである。
6歳の少女が残酷な現実を乗り越える姿は、大人である我々へのメッセージなのだ。
全人類必見の超絶傑作。