『ハート・ロッカー』


いついかなる時でも、性的欲求が生まれれば迷うことなくオナニーに身を投じる俺は、さながら性的欲求処理班の一員といったところ。 


しかし、イラクで日々命を削って奮闘している爆弾処理班を描いた映画「ハートロッカー」の切なさに比べたら、そんな俺のオナニー後の切なさなど屁みたいなものだなんてことは、別に言うまでもないことだと思う。


いつ死んでもおかしくない「爆弾処理」という仕事が、主人公の「生きがい」になっているというこの圧倒的切なさ。
この切なさは、そんじゃそこらの戦争アクションには到底出せないリアリズムで表現されていると思う。
戦闘シーンはメジャー大作にひけをとらない迫力だし。


淡々と描かれる爆弾処理班の日常は、1分1秒が生死の分かれ目という、地獄よりも苦しい日々。
そんな緊張感に始終さらされている彼らの精神状態を、クールかつ繊細な人間描写でドラマチックに演出。


そして本作の見どころはもちろん、ハイテンションで描かれた「爆弾処理」という作業の凄まじさ。


もう爆弾とか鬼すぎるよね、存在が。
バカ丸出しの意見で申し訳ないけど、爆弾処理ってもはや自殺行為なんだよね。


気やすめとしか思えない防護服を着せられて、単身鼻っ先に突っ込むわけだから。カッターとニッパー持って。
で、周りにはテロリストが民間人のフリして潜んでいるっていうさ。


これはもう死ぬ気で行くしかないわけだよ。


「死ぬ気で行く」って陳腐な言葉かもしれないけど、でも覚悟がある奴ってのは意外と死なないものなんだよね。
躊躇した奴は結構死ぬ。


マリオでもあるじゃん。
難易度高いコースで、慎重に行ったのはいいけど緊張感に押しつぶされてなんでもないミスしちゃってゲームオーバーとか。
で、死んでもいいや!って突っ込んでみたらうまく乗り越えたってことよくある。


まぁ、マリオと爆弾処理を一緒にする気なんか無いけど「たとえ」としてね。
ちょっと言ってみただけ。


とにかく「ハートロッカー」は、とことん切なくて、とことんハイテンションな戦争ドラマ。


硬派な作品であることは間違いないが、どことなく気品が漂っていて戦争映画特有のドス黒さがなかった。
そのへん女性監督だからだと思うけど、賛否が分かれるところかもしれない。


あと、役者がすげーイイ。
『SWAT』っていう映画で、危険な隊員役やってた奴なんだけど、相変わらずの危険っぷりでビックリした。
で、危険な奴なのにかなりセクシーで、監督も股間を濡らしながら撮ってた可能性大。


ラストが今世紀最高にクールなので、それだけでも1800円の価値あり。
観客は全員例外なく勃起してた。