『THE 4TH KIND フォース・カインド』


この作品は本気で気持ち悪い。
でも、そのおぞましさが快感で、かなり刺激的な作品。


ミラ・ジョボ嬢が、実在している精神科医を熱演するって設定の、再現映画ドキュメント(もちろんフェイク)。
この「再現映画」ってのがミソで、あくまで「映画」ではなく「再現」であるってところをアピールしているところが、この映画最大のハッタリなわけ。


つまり、物語の展開は「再現ドラマ」→「実際の記録映像」→「再現ドラマ」→「実際の記録映像」といった形で進んでいくので、テレビのドキュメンタリー番組さながらのリアリズムを醸し出す。


この手の映画は、デ・パルマ監督の『リダクテッド』とか、邦画では『ノロイ』ってホラー映画があったけど、基本的にはフェイクドキュメントとして展開していくので、ご丁寧に「再現ドラマ」まで入れてきたのは本作が初かもしれない。


フェイクドキュメント方式は、リアリズムがすべてであるため、登場人物は確実に無名の俳優でなければならないのに対し、再現ドラマは有名俳優を使ってもぜんぜん平気。
逆に、有名俳優が再現ドラマに参加することで、実際の事件への興味も真実味もアップするというもの。


そういう意味で、この作品はフェイクドキュメンタリーの完全体と言ってもいいかもしれない。


もちろん、ストーリーもかなりエゲつない内容で、とある田舎街で続発する怪奇事件のハナシなんだけど、結局のところなんだかよくわからない。
でもそのなんだかわかんなさが、上手く恐怖につながっている。


再現ドラマで、登場人物に感情移入をさせて、緊張感を増幅させる。
で、肝心の恐怖シーンには「実際の記録映像」を投入し、リアリズムと忌まわしさをアピール。


この洗練された大作戦が功を奏し、鑑賞者は「嫌なモノ観ちゃった感」で相当なダメージをくらうハメになる。


観てはいけないモノを観てしまったときって、絶望的な気持ちになるけど、「映画」という作りものの世界でそんな気分を味あわせてくれるなんて、本当に素晴らしいなって思う。
作り手が、ホラー表現に対して真剣だからこそ、こういった傑作ホラーが生まれるわけだよね。


ブラボー!