『イングロリアス・バスターズ』
タランティーノ監督の映画が好きな人たちって、どんな人たちなのかなーって時々思う。
まあ時々って言っても、2年に一回くらいなんだけど。
タランティーノ作品には、監督のハートがキラキラ眩しく輝いている。
作品そのものに、ハートがダイレクトに表示されてる感じ。
監督が何をしたいか、何を伝えたいか、俺たちに何を楽しんでほしいのか。
そういうのが、スクリーンからビシバシ伝わってくる。
だから俺は、タランティーノ監督の作品を観ているとき、なんか他人の映画を観ている気がしない。
心通う親友が撮ったプライベートムービーを鑑賞する感覚。
どんなにバカバカしいシーンでも、暴力的なシーンでも「しょうがないなー、もう」みたいな、やさしくて微笑ましい気持ちで鑑賞しちゃう。
俺はそういった理由でタランティーノ作品を愛しているんだ。
『イングロリアス・バスターズ』も、そんなタランティーノファンの俺たちを、心の底から楽しませてくれる素晴らしい作品だった。
オープニングからエンディングまで、ファンサービスとも言うべき細かい小ネタが散りばめられていて、好きな人だったら間違いなく悶絶するだろう。
作品そのものはシンプルかつストレートな話だが、それを奥深く味付けしているのは、もちろん登場キャラクターの変態っぷりと、詩的とも言える刺激的なセリフだ。
登場キャラが全員変態であるがゆえに、すべてのシーンが危うい雰囲気を醸し出している点。
そんなキャラたちがのたまうセリフひとつひとつが、ほとんど無駄話であるという点。
そこから生じる大きな緊張感こそが、タランティーノ映画の真骨頂。
タランテーノ作品においては、無駄話の多い気の抜けたシーンで、最大の緊迫感が観客を襲う。
また、キャラが変態ゆえに、彼らの一挙一動がなにかとドラマチックであるところも見どころだ。
ふとした振る舞いや目線などにも、なにやら怪しげな、恐ろしげな、ときにセクシャルな魅力を感じずにはいられない。
メインキャラを演じるブラッド・ピットは、本作で変態的な魅力をアピールすることに成功している。
もちろん俺なんかはブラッド・ピットなんか好きでもなんでもないが、軽く見直さずにはいられなかったことは言うまでもないだろう。
とにかく本作は、数あるタランティーノ作品の中でも、最高にバカで狂っててロマンチックな作品であることは間違いない。
観なきゃ処刑!