『サンシャイン20…』

 SF映画に関しては許容範囲が異常にダダっ広い俺。


特に宇宙モノは、オモシロくない作品を探すのが大変なくらい、なんでもかんでも大好きなわけ。
ミッション・トゥ・マーズ』『イベントホライゾン』『レッド・プラネット』『ノイズ』など、SFスリラーにハズレ無しだ。
俺は嫌いなSFって言ったら、まっさきに『スターウォーズ』と言ってしまう程、宇宙モノには「恐怖」を求める。


なぜなら宇宙ほど恐ろしい場所はないからだ。
酸素も光も重力もなんにもない真空世界で、人間が生きてウロウロしてるって事自体が恐怖だ。
常識など微塵も通用しない暗黒世界。
そんな場所で、精神的不安を抱えながら、神経衰弱ギリギリで人間らしさを保持する。
これほどスリリングな設定があっていいのかよと。


そんな俺が『サンシャイン2057』に興奮しないわけが無い。
公開時に何ゆえスルーしてしまったのか?
それはもう言うまでもなく、この『サンシャイン2057』という、人をおちょくってるとしか思えないタイトルのせいだ。


「サンシャイン」はわかる。
なんと言っても『キン肉マン』に登場する、悪魔六騎士のひとりと同名なので、こちらのテンションも上がる。
しかしその後の「2057」は余計だ。つける意味がわからない。
2057年という年代なんて、物語と何の関係もないし、なによりどーでもいい数字すぎて憶えられない。
「何年でもいーだろが!」とツッコミを入れずにはいられないタイトルだ。


とにかく、そんなこんなで遅ればせながらDVD鑑賞した本作、
太陽熱を遮断する特殊なシールドに守られながら、太陽に可能な限り近づいて爆弾を落とす任務。


なんという無謀な作戦だろう。
もうその設定の時点で、恐ろしさのあまり勃起してしまいそうだ。


案の定、得体の知れない灼熱地獄に近づいた宇宙船は、様々な呪い的トラブルに見舞われる。
すべて太陽がもたらす人知を超えた「パワー」が原因だ。


お約束のように、不幸極まりない死に様を見せ付けるクルーたち。
宇宙服にも有り付けないまま、宇宙に放り出されたオッサンや、太陽の直射で跡形も無く焼き尽くされるオッサンなど、素敵なオッサンたちのクールな無駄死にが素敵。
しかし明らかに、コンニャクゼリーを喉につまらせて死ぬよりは名誉な死に方だと思う。


クライマックスは、オカルトの領域にまで踏み込んだ衝撃の展開。
まさに太陽VS人間といった、最終戦争のような様相を見せる。
これはもう予想外としか言い様がない迫力だ。


なるほど、太陽の圧倒的パワーを考えると、太陽という星そのものに意思が無いとは言い切れない。
何から何まで未知数な、「太陽」という究極の世界を前にして、我々人間に出来ることは、ただ単に右往左往することだけなんだ。


この作品の凄いところは、やっぱり恐怖演出の上手さだろう。
太陽の「光」を、美しく、神々しく、そして恐ろしく表現することに魂を賭けている。
仲間がいなくなっていくサスペンスシーンも気持ち悪いこと山のごとしだ。
なにより乗組員たちのキャラが、必要最低限の自己アピールしかしていないとこがクールだ。
感情移入を許さないキャラ設定の貧弱ぶりが、「太陽」を前にした究極の無力という、人間そのもののちっぽけさを見事に表現している。


散々無駄死にを重ねた末に、意味のわからないクライマックスへと雪崩れ込むという不気味なセンスが光る、正真正銘の傑作SFスリラーだ。