『アメリカン・ギャングスター』

 『アメリカン・ギャングスター』は、ひとことで言うと完璧な映画でした。
文句のつけようが無い、「映画」という名のエンターテインメントの完全体。
監督のリドリー・スコットさんが、「完璧な映画にしてやんぜ」という意気込みを胸に、本気モードバリバリで撮影に励んでいる姿が目に浮かびます(リドリー・スコット見たこと無いけど)。

「完璧」なものを作るのに必要なものは、「完璧な素材」に他ならないので、デンゼル・ワシントンラッセル・クロウという、二人の完璧なるプロフェッショナルを主演に持ってくるのは必然。
この作品の完璧さは、そんな完璧なキャスティングによる完璧な演出にある。
すべてのシークエンスが震えるほど完璧。
息を呑むヴァイオレントなオープニングに始まり、デンゼル扮する麻薬の達人フランク・ルーカスのクールな仕事っぷり、それを追うダーティ極まりないラッセル・クロウの重戦車のごときヘビーな捜査。
演技が完璧だから、もうすべてのシーンが圧倒的にドラマチックなのです。

ベトナム戦争のドサクサ紛れに麻薬を密輸するという、バチ当たりな方法でハーレムの権力者となっていくカスみたいな奴の話。
なのにデンゼルが演じるとカッコ良すぎて、「がんばれ!ピュアマイハート!」と、ノリピーの名曲『GANBARE』を口ずさんで応援してしまいます。
ラッセル・クロウ演じるダメ親父も、これまたもの凄くダメな感じを醸し出してます。
元女房と息子の親権で争ってるのに、女弁護士とやりまくってるというストレートなダメっぷりに感動すら覚えます。

とにかく全編通して、デンゼル・ワシントンラッセル・クロウの演技が濃厚ですね。
もう、他の安い俳優の演技なんて見れないですよ。薄味すぎて。ニコケイとか。

ハーレムを麻薬まみれにして、気合いの入ったマフィア人生を送るデンゼルさん。
そんな、クソマジメにマフィアやってるアニキの足を、ことごとく引っ張りまくるバカ弟共の愚行の数々が、これまたエキサイティング!
ド素人の俺にも、「バカはとっとと始末しとくべきだ」という教訓として役立ちました。
とにかく、なんやかんやと「完璧」なストーリー展開をへて、緊迫感に満ちたクライマックスと「完璧」なるラストへツッ走るスピード感。
2大俳優が、絡まないんだけど同時進行でスゴイ事やってるという、まさに映画2本分のテンションです。
これはもう観なきゃダメです。観ない奴はバカです。間違いなくバカです。